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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第2回「正直者が得をする?特許権侵害巡る訴訟」
飯田 秀郷/著

 特許権侵害訴訟では、特許発明の内容や侵害したとされる対象製品の実際のところを正確に把握し、その対象製品が特許発明の内容を侵害しているか否かを裁判所に主張する必要がある。そのため技術者と詳細な打ち合わせをする機会が多い。
 先般、多数の製品が特許権を侵害していると訴えられていた訴訟事件で、審理が進行するうちに、それら製品の実験データがある特性を示せば、特許権侵害にならない可能性が出てきた。そこで急きょ、その特性に関する実験をした。すると大半の製品のデータはその特性を具備している結果を示したが、ある一つの製品のデータに微妙なものがあった。技術者はこのデータからは、その特性の存在を肯定するわけにはいかない、と頑強に言い張った。
 結局、その微妙なものを含めたすべての実験データを提出して、その技術者の言う通りに主張することにした。
 一般的に、技術者には正直者が多いという印象がある。科学技術に携わる者として、実験データのような事実に正面から向き合って、客観的な評価をする訓練を受けているからだろう。自分に都合良く解釈していたのでは、うまくいくわけがない。
 先の裁判では、提出した実験データの信ぴょう性を裁判所は全面的に認め、微妙なデータを示した製品を除く他の全製品は特許権侵害にはならない、と当方の主張を採用した。
 微妙なデータについて、強引にその特性があると主張していたら、当方の主張自体の信ぴょう性を問われ、実験そのものまで否定されたかもしれない。一部敗訴を覚悟した選択だったが、真実を追究する姿勢が重要であることを改めて確認した。

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