はる総合法律事務所 HARU LAW OFFICE

交通アクセス
〒105-0001
東京都港区虎ノ門3丁目7番8号ランディック第2虎ノ門ビル5階

執筆・講演等

執筆

日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第6回「異分野間の共同開発、情報開示し段階的に」
飯田 秀郷/著

 異なる技術分野の企業が相互に技術を補完しあって進める共同開発について、その一方の企業から「開発成果の全部を相手方の権利にするような秘密保持・共同開発契約が提案されてしまった。まるで下請け扱いでどうしたらよいか」という相談を受けることが多い。
 下請けと大手企業の共同開発契約では、専ら大手企業の技術主導による開発が進められる関係から、開発成果が大手企業に帰属するような契約になることが多い。しかし異分野の企業間の共同開発では対等に技術を出し合うのだから事情が異なる。その点を指摘し、実質的な開発内容を詰めていく必要がある。
 まず、共同開発のパートナーとして適当かどうか判断するためにも、相手方の保有技術は共同開発に役立つのか、その技術力は希望にかなっているのかなど、相互に情報を開示する。それに先立ち秘密情報を他に漏えいしないように秘密保持契約をする。開示された情報から共同開発ができそうだと評価できたら、共同開発契約に移行する。開発も実験室レベルから試作品、商業化レベルと段階がある。それぞれ次の段階に移行することができるか、評価しながら進めていく必要がある。
 これまで実現できなかった技術的な課題を解決するための手段が開発成果であり、その帰属は共同開発における貢献度次第だ。その上で、事業戦略上、特許権を共有にすべきか、単独所有にするかなどを吟味する。素材メーカーと製品メーカーの共同開発であれば、素材の特許権は素材メーカーが、製品の特許権は製品メーカーが保有するようにするなど、それぞれの立場で事業化後の収益構造が構築できるような工夫が必要だ。

戻る