はる総合法律事務所 HARU LAW OFFICE

交通アクセス
〒105-0001
東京都港区虎ノ門3丁目7番8号ランディック第2虎ノ門ビル5階

執筆・講演等

執筆

日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第12回「発明の権利化には技術の目利きカギ」
飯田 秀郷/著

 開発の成果で、いくつかの発明が生まれたが、権利化を図っていく上で何か基準は無いだろうか、という相談を受けた。権利化には、費用と時間がかかるが、その発明が事業化できるか予測はたっておらず、費用倒れに終わらないか心配してのことだった。
 特許権があれば、高収益が得られるというのは幻想だ。特許発明がいかに素晴らしくても、製品化して市場で受け入れられなければ、開発コストの回収でさえ難しい。
 開発成果に基づく製品プロジェクトの成功には、国際的な視野のもと市場規模をどのように見積もるかや、競合会社の動向、代替技術の開発状況、製品の製造地域や販売地域などをどのように予測するか、その上で特許権による防衛網がどの程度必要かが重要になってくる。
 市場をどのように立ち上げ、拡大させていくか、さらにその成熟化を図り、いかに発展させていくかといった観点で中・長期の事業計画を立て、特許権を戦略的に組み込んでいく。特許獲得の費用はそのための投資と私は考えている。
 どの発明を権利化するのかも、吟味する必要がある。工場内部で使われ、外部からうかがい知れないような技術なら、ノウハウとして保有するだけでよいかもしれない。権利化しても、他社は工場内でひそかに実施するはずで、侵害の立証が無理な場合も多いからだ。
 周辺技術まで固めた特許網を構築し、他社の追随を許さないという方法や、中核となる特許権だけにして、競合他社の参入を計算し、市場拡大による先行者利益を狙う方法もある。いずれにせよ権利化の鍵は、将来への技術の目利きである。

戻る