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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第13回「特許侵害への対処、正当性の強調、裏目に」
飯田 秀郷/著

 A社から「うちが持つ特許権を侵害しているB社の侵害製品を市場から早く駆逐したい。B社製品の販売業者であるC社等に侵害製品を店頭に並べないよう働きかけ、全部をA社製品に切り替えるよう提案するのはどうか」という質問を受けた。
 侵害製品を製造するB社だけでなく、これを仕入れて販売するC社等も特許権侵害にあたる。しかし、A社としては自社製品を購入し、販売してくれるC社は大事な顧客であり、侵害製品の販売禁止を求めるような権利行使をすると、逆にC社から取引停止を通告されるのではないかと懸念するわけだ。
 そこで権利行使はあきらめ、C社に「B社を特許権侵害で訴えることにした。今後はB社製品は作れなくなる」などと報告し、B社製品のすべてをA社製品に切り替える提案をしたくなる。
 しかし、B社からは「侵害など全くしていないのに侵害だと決めつけて販売業者に言いふらすのは、虚偽の事実を陳述・流布するもので不正競争防止法違反だ」と反撃を受ける可能性がある。
 B社の言い分はたとえ不当であっても、特許権侵害かどうかは最終的には訴訟で決着をつけるしかない。万一、侵害ではないという結論となったときは、「侵害である」とA社がC社に言ったことが結果的に虚偽になってしまう。
 特許権侵害でB社を訴えて、これを報道機関に公表することは真実だから問題はない。しかし、せっかくA社の正当性を公表しているのに、B社から逆に「言いがかりをつけているのはA社だ」などと付け込まれないように、十分注意した方がいい。

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