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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第14回「休眠特許は宝の山?流通市場の構築急務」
飯田 秀郷/著

 独創的な発明をしたら、特許権を取得するのが原則だ。特許権で技術を囲い込むことができれば、市場を独占し、経済的利益を享受できるからだ。テレビのブラウン管技術は、こうした囲い込みの成功例だ。しかし、最近の技術の発展はめざましく、新技術が次々に出現することで製品寿命自体が短くなっている。
 し烈な技術開発競争では、膨大な研究開発費を投じなければ勝てない。市場で旬の時期にある短期間に、それまでの投資を回収し、次なる技術開発のための投資を余儀なくされるのだ。
 こうして生まれた発明技術を模倣した製品が海外から大量に流れ込んできては、たまらない。だからこそ、企業は躍起になって特許権の侵害を食い止めようとしている。我が国で特許権に対し、迅速な権利化、侵害に対する強い効力が求められる理由はそこにある。
 技術開発の成果が商品化にまで結びつく確率は低いが、発明が生まれた時点では商品化の可能性があり、特許権を取得するのが原則。だとすれば商品化に結びつかなかった多数の特許権が眠っていることになる。休眠特許権は、いずれ廃棄される運命にあるが、利用の仕方次第で起業につながるなど宝の山かもしれない。これらを掘り起こし、市場で流通させる仕組みの構築が急務だ。
 今秋、信託業法が改正され、特許権などの知的財産権の信託が全面的に解禁になる予定だ。ベンチャー企業が、自社の技術を対象にした信託の手法によって資金を早期に得て、さらなる開発にまい進することが期待される。これをいかに利用するのか、これからが本番だ。

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