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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第15回「戦略的な特許政策は総合的観点で構築を」
飯田 秀郷/著

 先ごろ、我が国のある大手企業が、欧米のライバル企業から、多額の特許ライセンス収入を得たことが報道された。我が国企業の世界的な特許戦略が功を奏し始めたとも言える。
 特許権には、自社の事業を背後から支える重要な役割がある。そのために、他社が容易にその事業に侵入してこないよう、将来の技術発展の方向性を視野に入れ、特許権による網を張り巡らし事業を防衛するのだ。
 もっとも、世界中で研究者が技術開発競争する中で、一企業が常に先行するのは不可能だ。事業発展のためには、他社の優れた技術を導入する必要もある。交換条件で自社の技術を供出し、技術導入を容易にしたり、高い導入費用を軽減したりすることも考える必要があろう。
 戦略的な特許利用は、この自社技術と導入技術との総合力をいかに高めるかという戦略の中で位置づけるべきだ。この総合力を高めることによるシナジー効果で、自社の特許価値は増大し、その特許価値を背景に、特許ライセンスを取得することで大きな収入が期待できるのだ。
 特許権の有効活用というと、ライセンスを取得して稼ぐことを最優先しがちだが、安易なライセンスは、ブーメラン効果といって、ライセンスした企業の安い製品によって自社の利益構造を揺さぶられる危険もあり注意が必要だ。
 戦略的特許政策は(1)中核的事業を防衛する特許網と高い総合力の構築(2)これによるライセンス収入の増大(3)将来の新規事業の核となる発明による事業化やライセンスによる収入確保(4)周辺に生まれた発明の効率的ライセンス――といった総合的観点から構築される必要がある。

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