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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第16回「職務発明の対価算定、当事者間協議は前進」
飯田 秀郷/著

 青色発光ダイオード発明に関する職務発明の対価訴訟の和解が成立した。一審判決書の理由中では、六百億円余りが対価相当であるとされていたが、八億円余りの和解金に大幅に減少した。一審判決と二審の和解内容との相違の原因は何か、興味のあるところだ。
 発明は、人間の頭脳が生み出すものだから、発明した個人に特許を受ける権利がある、と特許法は規定している。このような制度は特許法に特有のものだ。例えば著作権法は、職務上の著作物は会社が著作者であるとし、これを生み出した個人に対し対価請求権を与えない。営業担当者が大口の新規商談をまとめて会社に多大な利益をもたらしても、法的には、その商権取得の対価を営業担当者に支払う必要はないのと同じだ。
 発明が職務上なされたとき、個人が取得する特許を受ける権利を会社が譲り受けるのだから、それ相応の対価を支払う必要がある。もっとも職務発明は会社の組織、資金、技術を利用して生まれるものだから、特許を受ける権利を持つ個人が特許権を取得したとしても、会社は自由に無償でその発明を使用できるとして、特許法はバランスを取った規定をしている。
 一審と和解とでは、発明者の貢献度や特許発明に基づく売り上げの範囲の認定でこのバランスの評価の仕方が大きく異なったということだろう。
 特許法が改正されて発明者と会社との間で、職務発明の対価の算定について合理的に決定する仕組みを構築すれば、それによって決定された対価額を原則として有効とすることになった。算定方式の定め方は今後の課題だが、当事者の協議に委ねた点で一歩前進だ。

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