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日本経済新聞(夕刊)連載「弁護士余録」第17回「知的財産権の取得、質を重視する方向に」
飯田 秀郷/著

 わが国では、毎年約四十二万件の特許出願がなされ、約十二万件が特許登録されている。わが国は世界一の出願大国である。そうした中、知的財産権の取得に関する状況は、質を重視する方向に変化しつつある。
 経営戦略に沿って、重点分野においては特許網を構築してライバル会社との競争を有利に展開する。とともに将来の事業の芽を確保するための布石を打つ、などの知的財産権の最適な組み合わせをする必要が出てきたのだ。
 特許権侵害訴訟の場でも、特許の質を重視する動きが出ている。従来の判例では、権利付与をした特許庁だけが特許権を無効にできるのであって、裁判所は特許庁が無効としない限り有効な権利として取り扱うとしていた。しかし二〇〇〇年、最高裁は裁判所も特許の有効性を判断できると判例変更して、無効になるような特許権は実質的に権利行使ができないことになった。これを受けて、今年の四月から特許法が改正され、この内容が明文化された。
 最高裁の判例変更以降、特許権侵害訴訟の大半で、特許の無効が主張されている。特許庁の無効審判においても、請求件数はさほど多くはないが、約半数の登録特許権が無効とされている。知的財産戦略にのっとって取得した特許権の権利行使が、無効を理由に不可能になってしまうのでは、元も子もない。
 知的財産権の取得の場面でも、権利を取得するだけでなく、真に優れた発明とは何かを的確に把握して、将来の紛争で無効とされないような質を確保する必要がある。実務に精通した専門家の協力を得て、盤石な権利を取得する必要性がますます高くなってきた。

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